Positron入門!

Rユーザーのための次世代IDE

寺井雅人(愛知工科大学)

2026-02-27 23:04:32

はじめに

自己紹介

  • 寺井雅人(Masato Terai)

    • 熊本出身、名古屋在住
  • 大学教員(助教)

    • 外国語習得や言語理解に関する研究
  • 北海道は31年の人生で初

私とR、Rコミュニティ

  • Rユーザー歴8年

    • データの下処理、統計解析

    • 半年前、RStudioからPositronへ移行

  • Rコミュニティ

    • 初参加:Nagoya.R (2018)

      • Tokyo.Rにオンライン参加
    • 初発表:Japan.R (2024)

想定している聴衆の方

  • Python < Rな方

  • パッケージ開発 < データ分析な方

  • Visual Studio Code(VS Code)< RStudioな方

今回の内容

  1. Positronについて

  2. Quartoについて

バージョンなど

  • Positron:2026.02.1
    • 2026-02-17リリース版
R.version.string
[1] "R version 4.4.2 (2024-10-31 ucrt)"

1. Positronについて

Positronとは

  • RとPythonを “First-class”言語とするVS Codeに似ている統合開発環境

    • Posit社(RStudioを開発)が開発中の次世代統合開発環境
  • もう beta 版ではない

    Stable releases of Positron are now available!
    Thank you to all our beta users who have been testing and giving feedback on our prereleases over the last year.

    Positron GitHub Releases[Jul 3, 2025]

こんな人にお勧めかも(by 公式)

RStudioとの主な違い

  • .Rprojがない

    • クリックすれば作業環境を復元してくれる便利なファイル
  • Positronではプロジェクト = ワークスペース(フォルダー)

    • VS Codeよりになった
  • 詳しい解説:The Rproj File

Note

RStudioのプロジェクト機能に関してはこちらを参考にしてみてください

  • プロジェクト機能やR Markdown、renvパッケージで研究の再現性を上げる方法のチュートリアルです。

その他のRStudioとの主な違い

  • Rがクラッシュしても、Positron自体は生き残ることが多い

  • RやPythonのバージョンの切り替えも、コンソールの再起動だけでよい

  • RStudioとは異なり、実行結果は、コンソールペインでしか確認できない

    However, we are actively enhancing our Positron-native notebook UI that will provide inline outputs for Python or R sessions.

    Frequently Asked Questions

  • RMarkdown、Quartoの書き出しが可能だが、いわゆる “Knit”ボタンがない

その他のRStudioとの主な違い

AI-Powered Data Science

  • PositronはRStudioに比べより多くのAIサポートを受けられる

    • Databot機能など、ノーコードでの分析が可能に

Note

AIサポートはPositronの推しポイントですが、個人的に使用してませんし、既に解説記事が複数あるので割愛しました。詳しくは以下のYoutubeや参考文献を参考にしてください。

And More!

つまり

  • RStudioの機能をそのままに新たな機能を拡張したわけではない

    • RStudioにしかない機能もある
  • RStudio: Rに特化した完成度の高い開発環境

    • RだけならRStudio
  • Positron:多言語の将来性のある開発環境

    • 多言語ならPositron

実際に触ってみましょう

Positronのインストール

  • Rのインストールも忘れずに!

    • R バージョン 4.2以上が必要
  • それぞれのOSに合うインストーラーを選ぶ

レイアウト

Pic From https://positron.posit.co/

それぞれの機能

  • Activity Bar:ファイル、Git、拡張機能、AIアシストなどを表示

  • Primary Side Bar:Activity Barの詳細。Activity Barで選んだものによって内容が異なる。

  • Editor:コードを記述する箇所

  • Panel:コンソール、ターミナルなどが表示される

  • Secondary Side Bar:変数や、プロットなどが表示される

RStudioとの比較

Pic From https://docs.posit.co/

Pic From https://positron.posit.co/

レイアウトの指定

  • Stacked Layout:デフォルト

  • Side-By-Side Layout:RStudioにより近い

  • Notebook Layout:Side-By-Side LayoutマイナスVARIABLESペイン

    • ソースコードの下にコンソールが配置される
  • Assistant Layout:Stacked Layoutとあまり違いが分からない。Primary Side Barが少し広い。

コマンドパレット

  • VS Codeからの機能

    • キーボードから手を離さずに作業できる
  • 大体のキーワードで検索してくれる(= 部分一致)

    • Windows: [Ctrl] + [Shift] + [P]
    • Mac: [command] + [shift] + [P]

コマンドパレット

  • [?]を入れると様々なコマンドを一覧可能

  • おすすめ

    • キーワード検索

      • コマンドパレットで[%]
    • ファイルを開く

      • Windows: [Ctrl] + [P]
      • Mac: [command] + [P]
    • 開いているファイルの特定の行にジャンプ

      • Windows: [Ctrl] + [G]
      • Mac: [command] + [G]

テーマ・フォントの変更

  • テーマの変更:左下の⚙をクリック → [Themes] → [Color Theme]

    • RStudioよりも選択肢が少ない
  • フォントの大きさの変更:左下の⚙をクリック → [Settings] → [Text Editor] → [Font Size]

アピールポイント

データの確認機能

  • データの分布や、欠損値の割合などを確認できる

  • 以下のコードをRunして、VARIABLESで確認

dat <- airquality

フィルター機能

  • RStudioに比べ、より詳細な設定が可能

    • [</> Convert to Code]をクリックすると、コードを出力してくれる

作成した図を確認可能

  • セッション内で作成した図が表示されており、探しやすい

    • 以下のコードをRunして、PLOTSで確認
dat <- mtcars
plot(dat$mpg)
boxplot(dat$mpg, dat$cyl)

ちなみに、、、

  • SESSIONタブで表示されている、VARIABLES、PLOTS、CONSOLEはドラッグ&ドロップで表示の順番を変更できます。

Git操作

  • サイドバーの上から3つ目がGit操作

    • RStudioでは、EnvironmentとGitを同時に開けないので、サイドバーに表示されているのはありがたい
  • RStudioに比べ、クリック操作で行えるコマンドがかなり増えた(VS Codeレベルになった)

    • RStudio:Commit、Push、Pull
  • 差分の確認はRStudioの方がやや見やすい

GitHub

  • 連携のしやすさ:大きな差はない

プレビュー機能

  • Previewを見ながらqmdやRmdファイルを編集できる

    • RStudioでは、Knit(Render)というステップが必要

ミニマップ機能

  • スクロールバーの上で右クリック → [Minimap]をクリック

    • RStudioのOutline機能はないので、その代用として使用

左:RStudio、右:Positron

おすすめ拡張機能

  • 必要なものは基本的にインストール済

  • 「VS Code おすすめ拡張機能」で検索がおすすめ

    • 大体の拡張機能はPositronにインストール可能

vscode-pdf

  • Positron内でPDFを確認できる

    • Split Editorで並列させると便利

Rainbow CSV

  • CSVファイルの中身を色分けして可読性を上げる

Pic From Rainbow CSV

indent-rainbow

  • インデントを階層ごとに異なる色でハイライト

    • 背景が黒だと見えずらいので注意

Pic From indent-rainbow

Positronのアップデート

  • [⚙] をクリックした一番下に表示

    • [Restart to update]をクリックすると警告無しでアップデートされます

2.Quartoについて

概要

  • Pandocを基盤にした研究・技術文書作成のための出版システム

    • Rに依存しない、多言語対応のR Markdown
  • Quartoでもウェブサイトをつくったり、本をつくることは可能

R Markdownの今後

  • RStudioと同様、今後も生き残るらしいのでご安心を

    • R Markdownに満足しているのであれば、Quartoに変える必要もない

R Markdown is not going away! R Markdown is used extensively and continues to work well. It will continue to be actively supported.

FAQ for R Markdown Users

PositronでQuartoを触ってみましょう

Quartoファイルの作成

  • 左上のNewをクリック -> [New File…] -> [Quarto Document]をクリック

  • キーボードから手を放したくないのであれば、

    • [Ctrl] + [P] を押す -> [>]を入力 -> [Create New File…] -> [New File…] -> [Quarto Document]

R Markdownファイルも開きましょう

  • 残念ながら.Rmdファイルのテンプレート選択画面はない

    • RStudioで作成した.Rmdファイルを開きます

R Markdownとの記法の違い

YAML:出力形式の指定

  • Quarto: format
  • R Markdown: output

YAML

  • R Markdownに合わせる

    • authordateも追加

      • date: nowでもよい
title: "Untitled"
author: "Masato Terai"
date: today          
format: html

コードチャンク

  • Quarto:チャンクで指定
#| echo: false
#| fig-width: 10
#| fig-height: 4.5
library(ggplot2)
ggplot(
    mtcars, 
    aes(hp, mpg)
    ) +
  geom_point()
  • R Markdown:チャンクで指定
``` {.r echo = F, fig.dim = c(10, 4.5)}
library(ggplot2)
ggplot(
    mtcars, 
    aes(hp, mpg)
    ) +
  geom_point()

その他

Important

Quartoでは、R Markdownよりも記法が少し厳しい印象です。

例えば、echo = Fと書いたり、“:” の後に半角スペースを入れないと怒られます。

  • 網羅的な記法は公式の資料を参照してください

HTMLファイルに書き出す

  • Quarto:[Preview]もしくは[口 Render on Save]に✔を入れてから保存

    • TERMINALでも可能

      • quarto preview ファイル名.qmd

      • quarto render ファイル名.qmd

  • R Markdown:上記の方法もしくは[Preview]で[Render Document With R Markdown]を選択

  • 公式のチートシートはこのリンクから

エラーが出たら

Caution

TERMINALでRenderすることも可能ですが、YAMLでengineを定義していない場合、エラーになる場合があります。

例えば、Python3がないと、TERMINAL操作ではRenderできません。おそらくデフォルトでJupyter設定になっています。

Starting python3 kernel…Python Unable to locate an installed version of Python 3. Install Python 3 from https://www.python.org/downloads/

従って、RユーザーはYAMLで以下のようにKnitrを明示しておくといいかもしれません。 engine: knitr

ちなみに

  • このスライドもQuartoで作成しています。

  • Githubの “index.qmd”を見ると、YAMLの設定など細かい点を確認できます。

    • YAMLで出来ない設定は.scssファイルで設定しています。
  • GitHubへのリンク:https://github.com/masato-terai/Workshop_SappoRoR

まとめ

RStudioから乗り換えるべき??

個人的にはお勧めだが、必須ではない

  • RStudioが消えるわけではない(開発が止まったりするわけではない)

    • Positronよりも、RStudio(10年以上の歴史)の方がより安定したソフトウェア(β版の公開は2011年)
  • R, RStudioにこれから触れる人は、Positronがお勧めらしい

    • 既にRStudioをガンガン使っていて、満足しているならRStudioのままでOK!

Positronへ乗り換えた個人的理由

  • わさもんだから(熊本弁:新しいもの好き)

  • データの外観機能が気に入っている

  • Pythonをもっと習得したいが、言語によってIDEを変えたくないから

  • Positronの将来性に期待しているから

Positronを勧める理由

データ分析のための補助機能が豊富

  • データの分布を一覧で出せる

  • プロットの一覧が見れる

  • 手をキーボードから離す頻度が減る

  • Git操作がより簡単に

  • AIのアシストをより受けられる

    • Databot機能などを活用すればほぼノーコードで分析が可能

Positronを勧めない理由

  • RStudioに慣れた人は最初戸惑う可能性大

  • R言語だけならRStudioで十分

  • 習得するためのサポートが少ない(特に日本語)

    • 紙媒体の資料はまだない

参考資料

  • 💻:ウェブサイト
  • 📽:Youtube

英語

日本語

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